大分県と言えば温泉。
別府や湯布院という有名温泉地を筆頭に県内各地に温泉が湧き出ていて、
その日本一の温泉湧出量を誇るべく大分県は「おんせん県」を標榜している。
今回旅する豊後大野市はそのおんせん県の中にあって
「温泉がない」数少ないまちのひとつである。
県の中西部に位置し周囲は阿蘇山、くじゅう連山などの山々に囲まれた
温泉も海もないまち。
いま、そのいろいろとないまちがとても面白い。
大分県豊後大野市の魅力を今回の旅を通じて紹介していきたい。
それは、とにかくあわてない、しあわせな旅。
手作りサウナと世界一導線の悪い水風呂!?
「カフェ・パラム」
「サウナのまち」として全国から注目されている豊後大野市。
オススメされたのは「カフェ・パラム」。
カフェ?なぜ?
田園風景の向こうにログハウス風の建物。
お店に入ると、眼下に清流奥岳川を眺められるテラス席でお客さんが食事中。
やっぱりカフェだ。
お店の奥に、煙突から白い煙をもくもくと出している小屋が見えた。
その可愛らしい佇まいに惹かれて小屋の前に立つと、「入ります?」と声をかけられた。
カフェ・パラム店主の小野光治(おのこうじ)さん。
はい。入ります!
サウナ服に着替え、サウナのドアを開ける。
熱風が顔を包む。
定員7人のスペースを今日は独り占め。座って2分くらいで汗が噴き出てきた。
はぁー、熱い。
熱いけど、やさしいアロマオイルの香りがとてもよくて我慢できそう。
目標の12分経過!サウナから飛び出した。
店主が笑顔で「じゃあ、水風呂どうぞ。」と笑顔で指差す先は。。。ん、下??
川や湖を水風呂にするのがアウトドア・サウナの特徴。
「世界一導線の悪い水風呂」を店主が自称するだけあって、
川まで降りるのもちょっとしたアスレチック。
恐る恐る川に足を入れてみる。冷た!
肩まで体を浸すと、流れる水が火照った体をぎゅっと引き締める。
気持ちいい。
自然の水風呂のあとは、サウナ横のウッドデッキに置かれた椅子に体を預ける。
さっきまで浸かっていた川のせせらぎを聴きながら目を閉じる。
ふわっと、全身が暖かくなる。
風が心地いい。贅沢な時間。
風に乗ってカレーのいいにおいが鼻に届く。
サウナ前に注文していたサウナ飯。
熱々に焼かれた石焼ビビンパ用の器に盛られたご飯に、自分でカレールウを流し込むと顔の前に蒸気が立ち上がる。
その名もロウリュウ・カレー。
アツアツ。サウナで汗をかいたあとのカレーは格別。噂に聞いていた豊後大野のサウナ。
ゆっくりと盛りだくさんで楽しい唯一無二の体験。
(このあとちゃっかり、かき氷も注文して、クールダウン。)
手作りサウナと世界一導線の悪い水風呂!?
「カフェ・パラム」の情報はこちら
カフェパラム
- 所在地
- 大分県豊後大野市清川町 三玉1699-2
- TEL
- 090-4340-2906
- 営業時間
- 11:00〜18:00
- 定休日
- 水曜・不定休あり
- 駐車場
- 有り(10台)
- 備考
- お食事をされた方はサウナが500円で利用できます。
カフェパラムのSNSアカウント
焼酎蔵でクラフトビール?
「藤居醸造/FUJII BREWERY」
お土産を買いたいと思って、カフェ・パラムの小野さんにオススメを訊くと、
「豊後大野は酒どころだから」と前置きして教えてくれたのは、藤居醸造。
代表銘柄「泰明(たいめい)」などの麦焼酎を中心に
全国的にもファンの多い焼酎蔵。
その焼酎蔵でビール?
早速、藤居醸造を訪ねてみたら、イメージしていた焼酎蔵の佇まいと違う。
黒を基調にしたスタイリッシュな建物が並んでいる。
その中のひとつがまだ新しいビール工場。
ビールの瓶詰め作業をガラス越しに見ていたら、
「いらっしゃい。」と声をかけてくれたのは社長の藤居淳一郎(ふじいじゅんいちろう)さん。
ビールを造り始めた理由を訊ねてみたら、答えはとても明快だった。
ここ数年、コロナ禍で沈んでいる地元を活気づける一手を模索していたけれど、
自分がずっとやってきた焼酎造りと大きくかけ離れたことはしたくない。
麦焼酎を醸す藤居さんのたどり着いた答えが麦酒(ビール)だった。
社長自らもスタッフと一緒に全国各地に足を運んで研修を重ね、
工場とショップを備えた「FUJII BREWERY」を2022年9月にオープン。
IDA(イダ)というブランドでラガー、ペール・エール、IPAの3種類を醸造・販売している。
「よかったら、お店で飲んでいってください。」と藤居さん。
え、飲めるの? はい、飲みます!
工場と道を挟んで斜向かいに建つショップに入り、カウンターでペール・エールを注文。
ビア・サーバーから「IDA」の文字が入ったグラスに琥珀色の液体が注がれるのを見届けて、席に座る。
若女将の藤居あやさんが「どうぞ」とグラスのビールを運んでくれた。
「いただきます。」
グラスからひと口、ビールを含む。はぁ、鮮烈。鼻腔を駆け抜けるフルーティな香り。
これ本当に原料、麦? あとから少し苦味がやってくる。
大人の味だ。
普段飲んでいるビールとは全く違う飲み物。
「すごく、おいしいです。」と伝えると、若女将が、ビールや焼酎のこと、
この地域のことを楽しそうに教えてくれた。
いい時間が流れる場所だ。
焼酎蔵でクラフトビール?
「藤居醸造/FUJII BREWERY」の情報はこちら
藤居醸造/FUJII BREWERY
- 所在地
- 大分県豊後大野市千歳町新殿150-1
- TEL
- 0974-37-2016
- 営業時間
- 11:00〜17:00
- 定休日
- 火・水・木(焼酎工房は不定休)
- 駐車場
- 有り
藤居醸造/FUJII BREWERYのSNSアカウント
巨大磨崖仏と横並びで自分と向き合う
「普光寺」
山門をくぐると住職の瀧本峰翠(たきもとほうすい)さんが
「こんにちは」と出迎えてくれた。
事前に「阿字観(あじかん)」体験を予約。
阿字観とは弘法大師が伝えたとされる真言密教の瞑想法。
普光寺では住職がその阿字観の深淵に触れさせてくれる。
この日はこの特別な体験をするために県外からも数組が普光寺を訪れていた。
もともと、この普光寺は日本最大級の大きさを誇る磨崖仏で知られていたけれど、
近頃、JR九州の豪華クルーズトレイン「ななつ星」のコースのひとつに組み込まれたことで
さらに脚光を浴びるようになったらしい。
瀧本住職にあいさつをして、どれどれ日本最大級の磨崖仏とやらを見てみますか、
と体の向きを反転させる。
「えー!」
思わず大声を出してしまった。いや、出るよ。
住職いわく、初めて寺を訪れた人は必ず、眼前の岸壁に掘られた巨大な不動明王を目にすると「えー!」っと驚嘆の声を上げるとのこと。納得。
その磨崖仏の横に、また巨大な穴(龕”がん”)がふたつ穿たれており、ひとつには木製の舞台、
もうひとつには護摩堂が埋め込まれている。
これはもう、荘厳。
そんな巨大な大日如来の横(本当に横)の舞台で瞑想ができるのが、普光寺の阿字観体験。
あくまで「体験」ではあるものの、住職は丁寧に説明してくれて、
安心して未知の体験に臨むことができた。
教えてもらったとおりに座禅を組んで、目を閉じた。
舞台の上に落ちた枯れ葉が風で動く小さな物音も聞こえるくらい
感覚は研ぎ澄まされた状態が続くけど、そのうち無音になる。
頭が空っぽになったみたい。
空っぽになると、不思議と自分が見えてくる。
どれくらいの時間だったのかわからない。
住職の声が聞こえて目を開くと、目を閉じる前とはすっかり変わった自分がそこに、、というのは嘘だけど、なんだか溜まっていた疲れが取れて体が軽くなった感覚。
心と細胞が「リラックスできた」と言う声が聴こえた気がした。
巨大磨崖仏と横並びで自分と向き合う
「普光寺」の情報はこちら
普光寺・普光寺磨崖仏
- 所在地
- 大分県豊後大野市朝地町上尾塚1225
- TEL
- 0974–72–1461
- 駐車場
- あり
エリア周辺のおすすめスポット
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用作公園
元岡藩の家老家老の別荘地の庭園を公園としたもの。広い敷地には、500本を超える紅葉や楓が植えられており、紅葉の名所として知られています。
- TEL
- 0974-22-1001
- 定休日
- なし
- 駐車場
- あり
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道の駅 きよかわ
新鮮な野菜など、地元のものを取り揃えています。「クリーンピーチ」は県内外で有名なもも。もものジュースやソフトは試してみる価値あり!飲食店も軒を連ねているので休憩にピッタリ。
- TEL
- 0974-35-2117
- 営業時間
- 7:30〜18:00
- 定休日
- なし
- 駐車場
- あり
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- この特集を書いた人
- 妄想旅行社ムトーツアーズ
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大分県に住んでいます。
大分に遊びや仕事に来た人を案内することにヨロコビを覚える男です。